言葉と思考・観たもの感じたもの🎹🌼🌿🌷🐦✨

演劇・映画・音楽を観た感想を書いてます。日記のような思考の記録もあります。

03.映画「へんしんっ!」


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へんしんっ!

原題:Transform!

監督・企画・編集:石田智哉

キャスト:石田智哉、砂連尾理、佐沢(野﨑)静枝、美月めぐみ、鈴木橙輔(大輔)、古賀みき

日本語字幕・音声ガイドありのオープン上映

 

◎あらすじ◎

電動車椅子を使って生活する石田智哉監督は、「しょうがい者の表現活動の可能性」を探ろうと取材をはじめた。演劇や朗読で活躍する全盲の俳優・美月めぐみさん、ろうの手話表現者の育成にも力を入れているパフォーマーの佐沢静枝さん。多様な「ちがい」を橋渡しするひとたちを訪ねる。

石田と撮影、録音スタッフの3人で始まった映画制作。あるとき石田は「対人関係でちょっと引いちゃうんです。映画でも一方的に指示する暴君にはなりたくないと思っていて…」と他のスタッフに打ち明けた。対話を重ねながら、映画のつくり方も変化していく。

(へんしんっ!公式ホームページより)

https://henshin-film.jp/

 

 

◎感想◎

石田監督が、すごく自分自身と向き合いながら、閉じこもるのでも、ぐいぐいと無理やり行こうとするのでもなく、静かに見つめながら潜りながら出会う表現者の方たちとまさに出逢いながら進んでいくそのやり取りがすごくなんて言ったらいいんだろう、魅力的だった。

石田監督は、医療的ケアを必要としていて。そんな自分の身体の取り扱いや注意点などをまとめた取り扱い説明書を自分で作成していて。写真と文章でわかりやすく伝わるようにと作られているという話が出てきた場面があり。

生きてるなかで、自分のことだったりを言葉で伝えることが必要な場面がとても多くて。その伝えるというそれも表現だと感じると話していたのが、印象に残りました。

私たちは人間ひとりひとり表現しながら生きているんだと思った。当たり前のことかもしれないけど、わたしの中で日常に新たな視点で色が差し込まれたような感覚になり、ハッとしました。

 

石田監督が砂連尾さんのダンスの公演に出演して、自分の身体を肯定的に捉えらるきっかけになった。と話していて。表現は可能性を広げてくれるものだ。とすごく改めて思って。

表現するということが、特定のひとだけに許された特権になってしまっているような部分があるなって感じて。その認識は、根本的に違うよなって思いました。誰だって心は自由になのだから。

 

この映画を観て、自分の可能性が広がりました。うれしい。たのしい。子どものように無邪気な気持ちになって、よろこびを感じました。心に深く触ることができる、それが表現の力なのだなと感じました。

 

美月さんが話していたことにすごく考えさ  せられました。自分の病気のことを知ってってと言うけれど、他の病気のひとのことも知ろうとしていこうよって感じるって。ハッとしました。

自分のことばかりじゃなくて、自分も理解していこう、って、そうやってみんなが自分のできるところから知っていこうってなれたら、もっとこの世界は誰もにとって、生きやすい生きてていいんだって思える世界になるって感じました。

それだけ、自分のことでいっぱいいっぱいっていうことも承知の上で、それでも、知っていこうよって思うって美月さんは話していたと私は感じた。

そうだよなって。人間と人間だから。わからないことは、恐怖になったり怖かったりするけど、知っていこうって知っていけたらいいなって思いながら生きるだけでも、違う気がするって感じました。

 

最後のダンスのシーンはほんっっっとうにすてきで。とっても魅入ってしまいました。時が止まったかのように輝いていました。

 

日常の時間から解放されて。日常で抱える壁からも解放されて。できないってことからも解放されて。それぞれが自分の踊りを踊っていました。

砂連尾さんが稽古場で話していた、「個にこもらずに、他人に寄り添いすぎずにいること」まさにこれを具現化しているなって感じました。ひとりひとりがひとりひとりでありながら、一緒に踊っていて。みんな良い表情をしていて、楽しんでるのが伝わってきて観てる私も顔がほころんでいました。

 

いたずらっこのような遊びも感じられて。だけどそれは相手への尊敬と敬意と一緒に今この瞬間を踊っているっていう感謝が存在していて。

踊っているひとりひとりの生き生きとした目がきらきら輝いてて。観ている私も童心に返ったような生き生きとした気持ちになりました。楽しかったなあ。最後のシーンだいすき。

 

最後石田監督が手を上に天に向かって挙げた、この最後のシーンを観て。私は、ここからまた始まるのだなって感じました。

 

「へんしんっ!」

このタイトルの意味を考えます。

とても好きな映画に出逢えて、嬉しいです。

私もまだまだへんしんっ!できるって気持ちになっています。観た人にそう思わせるって、すごいことですよね。

 

石田監督の次の作品も観たいです!

砂連尾さんの公演も観に行ってみたいし、美月さんの公演も、野崎さんの手話の絵本の読み聞かせのコミュニケーションも興味があります。

 

私はやっぱりこの表現の世界に掬われて生きているちいさなひとりの人間であることをまた感じたのでした。なんだか、自分も光の粒となって還元したいなって思いました。

すぐには無理でも、ゆっくりでいいから、一歩ずつ私も始めたいと感じました。土の中でしんぼうがんばります。

 

石田監督をはじめ、制作者・出演者の方々。

素敵な作品に出逢わせてくれた、FTレーベル プログラムディレクターの長島確さん、河合千佳さんに感謝です。

 

 

☆オープン上映について☆

 

視覚に障害がある方が映画を楽しめる音声ガイドと、聴覚に障害がある方が楽しめる日本語字幕の両方を映画の中に組み込み、誰もが楽しめるようにと作られたものを石田監督がオープン上映と名付けたそうです。

バリアフリーではなく、オープン上映という名前にしたそのことにすごく大きな意味を感じました。

 

 

〜わたしの感想〜

音声によるガイドと、字幕を映画の中に組み込んでいてとても新鮮だった!わたしが非常に良いなと感じたことは、音声を聴いてああ、視覚に障害がある方はこうやって映画やお芝居を観ているんだっていうことを肌感覚で知れたことです。

 

ここには、見えるひとも見えないひとも聴こえるひとも聴こえないひとも、それぞれがみんな同じ映画を観て楽しんでいるんだって感じられて。

少しずつでも改善していきたいと思うのだけど、普段マジョリティの中でないものにされてしまうことが多いなかで。

 

オープン上映となっていることで、お互いの存在を認識できるというか。それぞれの日常を生きている人間の存在を自然に当たり前に意識できて。ああ、もっとこのオープン上映が普通になるくらいなったらいいなあとすごく感じました。

しかも、見えるから見えないからとか聴こえるから聴こえないからどちらが上とか下とかはなくて。同等の同じこの世界で生活しているひとりの人間としての存在を自然に感じました。

 

オープン上映が画面を観ているひとの存在を想起させてくれることによって存在を認識できる。認識できることによって生活の中でのちいさな変化があるとわたしは思いました。そのちいさな変化が誰もが暮らしやすい社会に近づく一歩になるとこの映画を観て感じました。

 

社会による障壁が多すぎるから…もっともっとみんなが認識して知っていける当たり前に誰もが生活しやすい国になったらいいのにとすごく思います。

 

余談。

字幕機貸出サービスや台本貸出、イヤフォンで聴ける音声ガイドサービスなどがありますが。それだと個々でやるのでそうじゃない方が意識することってほぼないのが現状で。

このオープン上映が主流のひとつになったらいいなと強く感じました。

 

※追記。音声ガイドや字幕機貸出、手話通訳などのユニバーサルサービスがあるのが当たり前な社会にもっともっとなっていくことを望みます。この社会の設計があまりにも限られた人に向けて作られていると、自分自身病気になったこともありすごく感じています。この映画をきっかけに、ユニバーサルサービスというものに興味を持ち必要性を理解する知ろうとする人が増えるといいなと思いました。興味を持つ、知ろうとすることって、コミュニケーションの原点だなと感じました。もっともっと当事者以外の人たちの声だったり、知っていくことだったりが必要だと思いました。

 

そして言葉を耳で追うことがむずかしい方も見やすくなるなと思いました。わたし自身も、字幕があると読みやすいし理解がしやすかったです!

また、音声ガイドの導きによって、映っている場面の中で注目する箇所が生まれて。それが新鮮で心に残る場面となり、音声ガイドがなかったらそこにわたしは注目していなかったかもしれないと思うので、新しい映画体験となりました!