言葉と思考・観たもの感じたもの🎹🌼🌿🌷🐦✨

演劇・映画・音楽を観た感想を書いてます。日記のような思考の記録もあります。

Crossing Text:Between Mystery and Mystical ワークインプログレス発表会 微笑む老女 The Smiling Old Women

 

 

6月の後半。

 

ジャカルタと日本との共同制作プロジェクト。インドネシアジャカルタから来日。

 

 

 

共同制作の時間を共に。

ワークインプログレスの公演。

上演。アフタートークとそのあとに懇談会。

 

 

いくつものシーンがオムニバスのように散りばめられながら、全体でひとつの情景が浮かび上がってくる。それぞれのシーンから浮かんでくるもの。感じること。表情がありました。

 

高い天井から下がる白い和紙のような紙。まるで滝のようだと思った。荘厳な、だけど紙が真っ白ではなくてまだら模様があるせいか親しみも感じる。自然の中にいるような気持ちになった。舞台美術。

 

 

◆歌を口ずさみながら、白い布で包まれたものを腕に抱いて歩いてくる女性。椅子がふたつ。右側の椅子にはひとりの女性が腰掛けている。歩いてくる老女は、何かすごく深いところである種の悟りを開いたそんな雰囲気を漂わせている。歌いながらもうひとつの椅子に腰掛ける。この二人の女性のやり取りは、穏やかですごく包み込むようなあったかさがあった。同時にすごく悲しい出来事に触れたことのある人なのだと感じた。

 

 

 

◆台車に乗って、舞台エリアにひとりまたひとりと人間が運ばれてくる。運ぶ人物は深くパーカーをかぶり、黒い服を着ている。表情は読めない。けれど無ではない。静かに人間を運ぶ。

 

 

そこにひとりの女性がやってきて、並んだ人間をカウントをする。横になった人間は動かない。

 

亡くなったひとを人間として丁寧に人として触れている三橋さんの姿は、とても無性に救われる思いがしました。ごめんなさいごめんなさいって言いながら、体勢を変えてあげる。亡くなってからも大切に人として扱ってもらえたら。それだけで心が救われる気持ちになりました。

 

◆パソコンに向かって話す女性。リモートで対話を続け創作してきたコロナ禍を思わせる。遠い場所にいながら、会話したり画面ごしにやりとりができるのはよく考えたらものすごい進歩だなあと感じた。

 

 

◆病や、何かで苦しんでいる人と傍で祈ったり、唱えたり、擦ったり。なんとか助けようとするひと。それぞれ三組が苦しんで、祈っている。インドネシアと日本。違うけど、似た方法を取っていて。住んでる場所や使う言葉や文化は違うけど、人間だなって。変な感想かもだけど、すごく人間を感じた。

 

ひょんなことから治って元気になって、大喜びする。こんなふうに喜び合えるのって、すごいことだなあって思った。ほんとにとてもうれしそうで喜びが溢れてて。喜び合えるのってうれしいなあって。喜び合える自分以外の存在がいること。その喜びを感じた。

 

今の社会で生きてると見失いそうになるけど。自分が人間であることを忘れてしまってはいけないよなと感じた。人間の喜び、原点を感じた。生きてるってこんなに嬉しくて喜ばしいことなんだよなってそう思った。

 

◆三橋さんがひとりお墓参りにやってくる。

天井から下がる薄いまだら模様の白い紙の前にひとりひとりが立つ。今年も来ましたよ〜と三橋さんが話しかける。お父さんはおしゃれだからね〜って。話しかけられたときのお父さんシルさんがとても朗らかで穏やかに嬉しそうに微笑む。ゲネと本番と二回観させてもらったのだけど、このシーンは二回とも胸にこみ上げるものがあって。シルさんの表情と三橋さんの声にうっと涙が出ずには観られませんでした。

 

み〜よこちゃん(みちこちゃんだったかもしれません)。声をかけられて笑顔になるヨファさん。何かをヨファさんが言う。空から聴こえたようにその言葉は三橋さんに降り注ぐ。がんばってますよ〜!って返事をする三橋さん。

 

体は亡くなっても、心は近くにあって。亡くなった人が見ている。演劇だからこそできる表現で。実際には姿は見えないけど。あのシーンのように、ここにいてくれる。見ててくれる。そう思えて。

 

 

◆お客さんが答えたアンケートを紹介するシーン。インドネシア語と日本語とそれぞれ回答が紹介される。

バンキッドさんは、太陽みたいなひとだと感じた。ぱあ〜〜と明るくなる。優子さんはとてもかわいらしくて、板に立ってる優子さんはとてもしあわせそうで私はそんな優子さんを観てほくほくした気持ちになるのだ。嬉しい。

 

 

どこに埋葬されたいですか?

私は月がいいなぁ。と思った。なんでかっていうと理由は、地球から見る月が好きでよく空を見上げてるから。月から見る地球はどんなだろうって。月から地球を見れたら、地球のこと思い出せるしいいなあって思った。

 

◆ロボット三橋さんがお茶を運ぶ。お茶はいりませんか?と日本語とインドネシア語で話しかけながら、移動していく。とてとかわいい。愛らしい。最後にご主人さま〜って高音で泣くところに胸がぎゅってなりました。人と人とのつながり。人とロボットのつながり。またあのロボットの子がご主人さまと会える日がきますように。。

 

おそらく近未来。自分が埋葬される星を買うことができるようになっていて(前のシーンからそう感じたのですが、実際は宇宙旅行かも)

どの惑星がいいかを選びにきた人たちのシーンで。インドネシア語で冒険家のようなアリさんが嬉々として語りだす。たぶん魅力を語っている。どの星にしようかわくわくしながら選ぶ複数のお客たち。いくらかの値段の交渉をする場面もあった。

星が決まったとき、とてもうれしそうな顔をしていたのが印象的だった。それぞれ、どの星に埋葬されるかを決めて手続きの方へと去っていく。そのなかで、沖渡さんとホリファさんの二人だけは星を決めずにその場に残る。

 

 

◆沖渡さんは苦しそうな表情をしていた。ホリファさんは寒がっていた。

二人が横になって、起き上がり体勢を変えながらまた隣で寝る。また起きて体勢を変え寝る。そのやりとりが、視線がすごく日々の毎日の積み重ねと愛情を感じた。このシーンは、すごく胸に残っている。時間が3年くらい経過したのを見たような感覚になりました。あとどのくらい横にいることができるだろうか。何気ない仕草の繰り返しのシーンだけれど、愛おしい時間で。日常の中に隠れている宝ものを見つけたようなシーンに感じて。ここのシーンすごく好きです。

 

言葉がなくても伝わるものがあって。言葉を介さないコミニケーションがとても魅力的で濃くて。これはもしかしたら国際共同制作だからこそより強く見えたのかもしれません。人間の原点。

 

日本とインドネシアは文化が似ている部分があるのかもしれないと感じました。

 

 

◆シルさんの儀式のシーン。

何かの儀式なんだということが、シルさんの装束と佇まい動きそして音から伝わってくる。それは誰かに向けて話されていて。私はお経を思い出した。音が日本で生きてる私も馴染みがあって、だけど異国の国で似ているけど違うけど共通するものを感じる。興味深いと思った。

 

くるくるぐるぐると周りながら、上げている腕の形が変わってお花みたいだなって感じてぐるぐると速く回っているのだけどとても静かで。シルさんの肩と腕の間に纏う風が空気が素敵だなって見惚れてしまった。

 

◆お盆の送り盆。

懐かしくて。子どものときに毎年、父の実家に帰っていとことみんなが集まって。提灯を持ちたくて、どっちが持って歩くかで弟と喧嘩したり。お墓までの途中にご近所さんとすれ違って挨拶したり。にぎやかなお盆の記憶が思い出せれて懐かしくて。夏の夜のあの空気がまさにあの送り盆のシーンにあって。新しい家族が出来て、帰ってきて。そうやって人間の小さな暮らしの営みが形を変えながらも続いていることが、感じられて。代行送り盆は時代が進んだのを感じた。選択肢はいっぱいあっていいよねって個人的には思う。今まで出来なかったことが可能になるのは、すごい進んできてるんだなって感じた。

 

 

全体を通してインドネシア語で何を言ってるかわからないのだけど、なんとなく雰囲気は伝わってきて。文脈、シーンの背景からこういうことを言ってるのかなって感じる部分。まったくわからない部分。両方あって。あえてなのかわからないけれど、全部は理解できないのがリアルだなあと感じた。

 

日本は正座、あぐらをかいて地面に座る。地面とすごく繋がりがあって。その地面と親しいのがインドネシアと共通しているなと感じた。日本よりもっと、インドネシアの方がより地面と親密な感じがした。

 

インドネシア語の響きは、深くて。俳優のひとりひとりのみなさん声がとても素敵で。響きが聴いていて心地が良かった。

 

 

最後のシーン。

 

◆三橋さんに向かって、ホリファさんが微笑んだそのやわらかい微笑みがとても心に残っている。何を言っているのかは、わからないのだけど。歌を口ずさみ静かに歌う三橋さんと、それに答えるようにハミングするホリファさん。じわ〜と心があったかくなった。言葉が通じなくとも、わかり合える、共に在ることはできるのだと。そういう瞬間を目の前にしていた。あったかい希望だと思った。

 

今まで共同制作を重ねてきたその時間がまた重なって今回のワークインプログレスになって。お客さんに観てもらえて。またここから、どこに行くのだろう(次は10月にジャカルタで上演ということで…!)*

 

観る・観られるという関係の公演そのものだけでなく、こうやって創る過程をお客さんにも共有できるのはすごく素敵なことだなと思いました。懇談会では、たくさんの方たちが語り合っていて。新しい出会いがあって。とても良い雰囲気で。うれしかった。

 

こうやって交流できる機会が、また実現できたら素敵だなと思いました。ここに至るまでたくさんの人が関わって、準備をしてきて。きっと色々な大変なことも乗り越えて、この日が迎えられたのだと思うから。ひとつひとつ、一歩一歩進んでいく先に喜びがあるんだなって感じて。私もがんばろうって無限の力をもらいました。 

 

私は1日だけ稽古の見学と当日の受付を手伝わせてもらって。あの場に元気にいられたことが、私にとっては奇跡的で。少しでも携わることができたこと。新しく出会えたことがしあわせで特別な時間でした。

 

観て、終わりだけじゃなく。語り合ったり、感じたことを話したり。そういう場が、私は好きなんだなって改めてとても感じて。観た後にすぐお客さんと言葉を交わせるのはまたとないうれしいことだなぁと思うし、観たあとに直接感想を話せるのはとてもうれしくて。私は演劇が好きなのだけど観るだけじゃなくて。こうゆう観たあとにお互い感じたことや思ったことを話したり、感想を伝えあったりそういうコミニケーションができるのがさらにとっても好きなんだということを改めて実感しました。こういう交流がまたできるようになってきて良かったなってうれしいなってしみじみ思いました。

 

もっと英語が話せるようになって、コミニケーション取りたいって思って。欲張ってインドネシア語を覚えたいなって話せるようになりたいなっていうことも思いました。

 

人が微笑むときは、どういうときだろう。

 

人が出会って心を交わすとき。

大事な人が会いにきてくれたとき。

大事な人が話しかけてくれたとき。

また新しく出会えたとき。

心の深いところでのやりとりが生まれたとき。

大切にする気持ちが伝わったとき。

 

そんなことをこの公演を観て感じました。

 

また新しい出会いに向けて。

またここから出発だ。

 

感謝を込めて🌼✨

 

2023.6.27