言葉と思考・観たもの感じたもの🎹🌼🌿🌷🐦✨

演劇・映画・音楽を観た感想を書いてます。日記のような思考の記録もあります。

映画「her」

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her またすごいものと出会ってしまった…何回も見たい。言葉で現せられない気持ちに何度もうぅぅってなった。それはホアキン自身が一番揺れ動いていて振動しているからなんだね。ホアキンの内面の繊細な時に激しく時に弱々しく微かに消え入りそうな程の揺れ震えるその振動(たぶんこれが魂の震え)が見ている人を共鳴させ、共振した自分も揺さぶられる。カメラの追い方と景色の見え方が抜群に丁寧でここしかないっていうツボをねらってドンピシャで優しく入ってく。その見せ方がたまらん。景色と人物の写し方や画面における割合が、自然でたまらんときと、これでもかってくらい表情に近寄っていくそのバランスがアンバランスで人間っぽくて好き。全体を通してセオドア(ホアキン・フェニックス)を見守るカメラの目線が近すぎず遠すぎず距離感(物理的じゃなく)が絶妙で優しくて。木とか花と植物の目線だなあと私は感じた。植物は言葉では何も言わないけれど、そこにいてただ見守ってくれている。静かにただそこにいてくれて、静かにただそこにいさせてくれる。そういう目線をカメラに感じた。だから、せつなくさみしくどうしようもなくもどかしく説明も整理も出来ぬまま…でもそれを包んで暖かい。

肉体はないけれどher、サマンサ(スカーレット・ヨハンソン)には暖かさがあるんだよな。人間はぬくもりを、暖かさを求める生き物なんだよな…言葉を贈ることで、愛する人を暖かく包み込むことができる。人のぬくもり、温度について考えさせられた。燃えるような熱さではなく、人肌の体温。人肌のくっついてるとじんわり暖かい体温のような映画だと思った。画面の色使いがセオドアの赤いシャツや黄色シャツに始まり暖色系の色で作られていて、寒色に暖色が入ってくるシーンはそれだけで暖かさを感じました。たぶん画面の温度についてはすごく考えたんじゃないかなと思う。目頭が熱くなる、と言うように涙にも温度がありますもんね。そして、、、音楽が最高。台詞もなんて素敵な視点で捉えて笑ってくれるんだろう。優しい軽やかさを感じる。激しく揺さぶられながら、繊細に落ち込んだり傷つけたり、前に進めなかったり断ち切れなかったりぐずぐずしていたり、卑屈になっちゃったりしながら生きていく私たちと一緒に歩いてくれる映画だなと思った。出逢えたのが嬉しい。ポケットに入れようと思う。自分のコンディションと寒いこの12月の今日っていうのがマッチしたのか今見れてすごく良かった。

最後に。手紙を読むセオドア(ホアキン)の声が優しい。こんなに優しい人いる!?ってくらいに優しい。優しい部分は変わらなくてもいいのかもしれない。セオドアの優しさのように。人間誰しも変われない業なのか変われない部分って持っているんじゃないかと思う。度合いやそれが何かは人によって違うし本当に困りもんだけど、一概には言えないけれど、変われないままでも増やしていけたらいいのかな、景色を。新しく見える景色があるのはそれ自体がもう希望だと感じました。勇気をもらいました。