言葉と思考・観たもの感じたもの🎹🌼🌿🌷🐦✨

演劇・映画・音楽を観た感想を書いてます。日記のような思考の記録もあります。

01.映画「ナイトクローラー」


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原題:NITGHTCRAWLER
監督、脚本:ダン・ギルロイ
出演:ジェイク・ギレンホールレネ・ルッソ

あらすじ。
悲惨な事故現場や殺人現場を映像に収め、それをテレビ局に持ち込み高額で売りさばくフリーランスの報道映像カメラマンとなったルイス(ジェイク・ギレンホール)。そこでルイスは、ひょんなきっかけからどのような映像を買い放映するかを握るテレビ局の上の立場にある女性ニーナ(レネ・ルッソ)と出会う。彼女との出会いが、ルイスをより刺激的な映像を求める方へと向かわせていく。そしてニーナもまたルイスとの出会いにより彼女の人生を大きく変えていく。興奮と高揚と抱え、徐々に常軌を逸していく二人が行き着く先は…。

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何から言葉にしたらいいのか…。とにかく怖かった。怖くて先を見るのが嫌だと思ったくらい怖かった。カメラを人に向けることは暴力であるということを画で感覚的に一瞬で解らせるあの一連の画にはこの作品の凄みを感じた。たぶんあそこが最大に盛り上がり緊迫するクライマックスだと思う。カメラが人を殺すことだって出来るんだって言ってるように感じた。肌で理解させにいくあの画は頭から離れない。現場をカメラに収めることを越えて捏造(ねつぞう)していく方に舵を切っていくところは、捏造を閃いた彼のその興奮と体が思わず動いてしまう様をジェイクが生々しく演じていて。恐ろしい場面なのに妙に高揚感がある様が、自分にも同じ人間としてそういう部分を備え持ってることを感じさせられて、恐ろしかった。嫌な本質を魅せつけられているような。凄まじかった。


ルイスとニーナの間に常に揺れ動く交渉。打算。期待。見返り。欲望。焦り。交渉する限り、そこに現れる見返りや勘定の秤。魅せられる未来への期待。裏切り。裏切りというのは勝手なイメージや行動を相手に対してこちら側が持っているから生まれる。裏切れない関係に持ち込んで、相手を動かそうという意図が生じる関係を悲しいと感じた。でもそこに喜びや快感を感じる人間もいて。刺激に魅せられ人間を失っていく様は、周囲の目からビシビシと感じられた。特別リックの存在がルー(ルイス)の異常性を浮かび上がらせていた。あの画面の画面から語りかけてくる目を忘れたくても焼き付いてしまってたぶん忘れられない。


ラベンダーかな。毎朝、植物に水を与え育てるルイスの手。綺麗で美しかった。カメラを向ける彼の手。死体を掴み引っ張ってを捏造させていく彼の手。小切手を受け取る彼の手。握手する彼の手。人間は言葉でいくらでも嘘をつけるかもしれないけど、手は嘘がつけないなと感じた。矛盾に見えるかもしれないけど、全部同じ手なんだよな。カメラを撮る彼は、美しくはないなと私は感じた。カメラを手にする彼は自分だけの快楽と興奮を求めていて、それが達成されるならばあとは誰がどうなろうと構わない。まるで取り憑かれたかのように己の欲望に動かされ突き進んでいくルイスの姿は、ある意味まっすぐでそれ故に残酷で。子供のようだな、と私には感じられた。ルイスを演じたジェイク・ギレンホール、すごい俳優だ。

タイトルのNightcrawler。「ナイトクローラー」で大ミミズ。夜間に地上にはい出て動くミミズ。を表すそうです。これを直訳すると「夜をはう人」映画を見終わってからタイトルの意味を知り、戦慄が走りました。



要注意
※映画全体を通して、悲惨な事件・事故の現場の映像が何度も何度も出てきます。モザイクや隠して暗に匂わせるなどの方法は取っておらず、直接的にそのまま映されています。それがこの映画に於いて主題となる重要なものだからなのですが。苦手な方はご注意ください。
(私は血を含めグロい映像が非常に苦手な人間で。見終わってから1.2週間は映像が頭の中に焼き付いて離れませんでした。それくらい私にとってはショッキングでした)