本日のshelf♪ver.IMA

近況と思考、人生は続く

shelf「つく、きえる」感想

宙ぶらりんの中から掴めない何かを掴もうと言葉にする、言葉にしてみる。掴めたのか掴めた気がしただけなのか…。言葉が生まれる瞬間を丁寧に掬うように描いていると感じられて。だから今までずっと人が言葉を発するということについてたぶん誰よりこだわってきたshelf、矢野さんの演出と ローラント・シンメルプフェニヒの書く戯曲との相性が良いのかなと思った。

明日が来るかもわからない、5秒後に自分が生きているかもわからないそういう不確かなことだらけの中で生きている。確かなことは、今生きているということだけ。そんな宙ぶらりんで揺れながら人は生きてるんだということを静かにそうだよねって静かに寄り添うように感じさせてもらった。そんな中で出会えたね、うれしいね、そう作者から話しかけられているような、そんな時間だった。

ファンタジーでユーモアがあって掬っても掬っても掬えないものがそこにはあって。ただ静かに誰かの話を聴くっていうことが心地よかった。

粉々に砕けたグラスだったガラスや、地面に落とされた鍵、ベッド、ドア、無機物のものたちがしゃべるところが箇所箇所にあって、そのシーンが好きだった。人間だけじゃないよなって感じられた。私は人間だからついつい人間だけの世界を考えてしまうけれど、地球にいる生き物は当たり前だけれど人間以外の生き物がたくさんいて、私は有機物のひとつに過ぎないのだと、生きてるのはお前だけじゃねえと感じさせられた。

言葉をこういう風に使えたらいいなと感じたのであります。私たちは起こったことを語るけれど、本当の意味で語ることはたぶん誰も出来なくてだけどそれでも語るっていうそこが人間らしくて。人間のいとおしくもかなしい部分だなって。ラストのところで特別そう感じました。言葉というものを獲得してしまった人間の業を感じました。


セロの音色がなんともなんともこれまた言葉に出来ないところを語ってくれているようで、言葉をしゃべり、音楽を奏で、交わったり、疑ったり、沈黙してみたり、恋したり、信じたり、笑ったり、手をつないだり、家を建てたり、冷蔵庫を買いに行ったり、秘密の時間があったり、月曜日の約束をしてみたり。そうやって人間は営みを繰り返しながら生きているだけなのだ。ただ営みがそこにあるだけなのだ。太陽が登ったり、日が沈んだり、雲って水平線がよく見えなかったり、そこに意味を見いだそうとするのはいつも人間で、だけどただ音楽は流れているだけなのだ。ただ星が見えるだけなのだ。ただ人間に星が見えるだけなのだ。宙ぶらりんはあまりに不安定過ぎるから人は何かを信じたり意味を見いだしてみたりするのだろうかとそういうことを考えた。

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